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ヤフーショッピングの戦略と問題点について考察

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本日の記事でヤフーショッピングのこれからの戦略について簡単に語られていたので、それを考察し、さらに、その戦略を実行した際に問題となるであろう点を指摘し、その課題解決にはどのような施策が必要となるのかを考えていきたい。

まず、このページで記載されている気になる点一つ抜粋したい。

  1. 期待が大きいのが、後払い型の広告商品「PRオプション」だ。出店者は商品代金の1~15%の間で広告料率を設定できて、料率に応じて検索結果の上位に出やすくなり、広告料は商品が売れてから支払う。月額の出店料など、手数料を無料にしているので、出店者からすると、ほかのECモールに払っている手数料程度は「PRオプション」にも予算をかけようとする意欲が生まれやすい。

上記が、今後のヤフーショッピングの基本的な戦略になると思われるが、そこで、起こりうる可能性の高い問題点と、後述するその他の問題点の解決策を考えていきたい。

後払い型の広告商品「PRオプション」について。

これは、一見画期的な商材に思える。その理由は、従来型の広告との比較でよくわかる。従来型は大きく分けると2種類に分類される。

従来型広告について

  1. 看板などの一定期間、一定額を支払い広告を掲載する広告
  2. 検索連動型広告。いわゆるPPC(ペイパークリック)と呼ばれる広告
上記広告方法には大きなデメリットがある。
  1. 費用対効果が不明瞭で、実際に利益が発生するのかやってみなければわからない。そして大抵の場合は、赤字になるという点である。
  2. これらの広告は初回購入者を集め、その顧客を如何にリピーターにできるかが勝負であるが、よほど商品力に差別要因がある企業か、利益率が非常に高い企業、大手企業のような巨大な資本力がないとなかなか継続していくのは難しい。

モール出展者のように大多数が中小資本の場合には、満足いく結果を得られる事業者は少ないであろう。

さらに、出展料無料化によって、かなりの数の非製造業者。つまり中抜きをする業者が増えたことは想像に難くない。そのような業者は、利益率が相対的に低いので、従来型の広告に手を出すことはほぼ不可能である。

上記のデメリットを解消し、ほぼすべての出展者から手数料を獲得することができるのが、後払い型の「PRオプション」である。

後払い型の「PRオプション」仕組み

  1. 商品代金に応じて、広告料を設定できる。即ち、粗利率の範囲内で広告料を設定できるので、赤字はない。
  2. 広告料率によって掲載順位を変動させれば、必然的に高い料率の商品が上位表示され、ヤフー側にも1%から15%程度の販売手数料を得られる。
  3. 広告率を設定しなければ検索結果に反映されない仕組みになるため、設定する業者が過半となる。
  4. 結果として、手数料無料にした代金並みの収益を獲得することができる。

このように、一見して、双方にメリットがあると思われるが、ここでこの仕組みの重大な欠陥を指摘したい。さらに悪いことに、この仕組みは出展料無料の場合、相乗的に悪影響をまき散らすことになる。

ヤフーのボトルネック

検索上位に表示されるメリットと、利益最大化を同時に達成しようとする出展者が続出する。

  1. 検索上位に表示されなければ売上が上がらないため、広告料率を最大化する
  2. 広告料率を最大化しても、利益を確保したいと考えるので、売価を引き上げる
  3. 結果として、通常売価に広告料率を+した価格が割引前価格になる。

なぜ、このようなことが起こるのかというと、ヤフーショッピング側の仕組みに付け込まれている。

  1. 出展料が無料なので、売れたら儲けもの程度に軽く考えている業者が多い
  2. 出展者は利益を最大化したいと考えている。
  3. 出展料無料に引き付けられる業者の多くは、生産者や製造元より、中抜きをする業者が多く、利益率が低い

出展料無料が引き付けた弊害

不思議なことに、無料だと喜んで出展者が運営に力を入れ、その分を広告費に回すかと言ったら実はそうではないのだ。

力を入れているのは、多額の費用を投じているサイトになる。回収に必死になるからだ。

その反面、ヤフーは無料である。とりあえず出して、本格的に売れるようなら、サイトを整えようと考えるのが中小事業者である。

彼らはもともとリソースが少ないので、すでにいくつかサイトを運営している場合、ほぼ現状で手一杯なのである。

出展料無料なので、利益率の低い業者も参入することができた

日本の商習慣は、製造業と小売業は伝統的な企業になるほど分離されている。また、利益率でいえば、製造小売業が最も高いことは言うに難くない。

ネットショッピングでいえば、製造と小売りが一体となっているところのほうが少ないのが現状である。つまりどこからか商品を仕入れて販売をしている業者が多い。

さらに、小規模になると、商品を仕入れず、売れたらメーカーから直送していもらっている業者も多い。このような業者ではさらに利益率が低く、2割程度の利益率で運営しているところも多いと考える。

その結果として、通常売価から、広告率を差し引いて利益を得ようとすると雀の涙ほどしか残らないことになる。

だからこそ、割増料金から広告料を差し引こうと考えるのである。

 

またこの1.であげた問題点は実は、すでにほかの重要な問題を引き起こしている。

他の問題点

放置店舗の増加

このインタビュー記事でも触れられていたが、以下のものである。

自社倉庫のないモール型ECの大きな課題は、統合的な在庫管理ができないことだ。利用者が「在庫あり」と表示されているので注文したが、実は売り切れていたという状況は避けたい。これは、倉庫を持たなくてもシステム面で対応を進められる部分が大きいので、今後、改善を進めていく。

 なぜ、このようなことが起きるかというと、出品してみたものの、ほとんど売れないため、放置している業者が非常に多くなっていると思われる。

売れないから放置

無料化によって出品した業者の多くは、初期投資をして、サイトを整える、運用人員を確保するといったことをせず、売れたら体制を整えていこうと考えている業者が多い。

しかし、大量に新規出店が増えたため、多くの業者が満足に運営費用を賄えず、結果として出品したものの放置が多くなっているのが現状であると思われる。

検索順位を下げても放置店舗に注文が流れる理由

また、そのような店舗に注文する状況を考えてみると、欲しいと思っていたが、どの業者(正常に運営し、在庫切れの場合は迅速に更新する)を覗いても売っていないので、検索を繰り返した結果、まともに運営していない業者へ注文が流れているという状況である。

ヤフーのボトルネック2

これは、ヤフーによって出展料を無料化して品ぞろえを一気に増加させるヤフー側の抱えるボトルネックであろう。

なぜなら、顧客にとっては労多くして益なしという状況であるし、それなら、在庫が管理されているAmazonで買おうとなるからである。

 解決策について

解決策はシンプル

  • 割引率ではなく、割引後の単価によって検索順位を変動させる。
  • 毎月在庫の有無をチェックさせる仕組みを導入し、チェックが入っていない商品は売り切れにステータスを変更させる。

広告料率と出展者の利益率は補数の関係になっているので、まず顧客優位の観点を持ち込まなければ長期的にはAmazonに敗れるだろう。

また、在庫に関しては、根本は運営体制が整っていない業者を排除することで正常値まで改善できると思われるので、簡単な☑の仕組みを導入すればよい。キャンセル率を表示させたところで、実は顧客にとっては何の意味も持たない。キャンセル率99%だとしても、その商品は出荷できるかもしれないからだ。どうしてもその商品が欲しい場合は、顧客はとりあえず注文を出すだろう。イライラを加速させるだけである。

 

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